今回は凍害について解説したいと思います。
私は、コンクリート診断士、コンクリート主任技士を取得しています。
特に、コンクリート診断士の取得を目指している方に有益な情報を発信すること目指しています。
凍害については、特に難しいものではないと思います。
それは、中性化や塩害と同様、外からの影響を受けて劣化していく現象だからです。
その原因は水になります。
では、凍害のメカニズムについてみていきます。
凍害のメカニズム
冬季に水がコンクリートの細孔に入り込み、凍結することで体積膨張しコンクリートが損傷する現象です。
具体的には、コンクリートはポーラス(隙間だらけ)なものなので、隙間は大きいものもあれば小さきものもあります。
そこに水が浸入するとまず、小さい隙間に入った水が凍結します。そうすると体積膨張により未だ凍結していない水を押します。
その水の圧力でコンクリートが損傷を受けるという原理です。
まとめ
- 小さい隙間に入った水が凍結する。
↓
- その圧力で未だ凍結していない水を押す。(大きい隙間の水を押す)
↓
- コンクリートの表面が損傷する。
※要点:小さき隙間の水が先に凍ることを覚える。
凍害は、凍結融解を繰り返しながら長年を経てコンクリートの表面を損傷させていきます。
凍害に強いコンクリートというのは、空隙がたくさんあるものになります。
水が体積膨張しても水が移動する場所があれば水圧が緩和できます。
コンクリートは水が浸入しない方がよいため、表面は密実がよいということになります。
では、どういう調査で凍害に強いか弱いかを判断するのか述べていきます。
凍害の調査方法
凍結融解試験
凍結融解を300回繰り返して、相対動弾性係数が、80%以上あること。
※既設構造物からコアを採取し試験する。
気泡間隔係数調査
気泡間隔係数が300μm以下であること。
※空隙との間隔が広くないことがよいということになります。隙間が近いと水圧を緩和できます。
水銀圧式ボシロメータ
細孔の分布状態を調査するものです。水銀に圧力を加えて細孔中に入れることで空隙の分布が調査できる方法です。
ただし、気泡間隔係数がわかるものではありせん。ただ、細孔の分布を調査するだけです。
そのため、凍害を調査する方法としては少し弱いと思います。
あとは、水セメント比や使用されたコンクリートの種類を当初の設計図書から調査したり、構造物の日照時間を調査したりして凍結融解が起こりやすいかどうかを確認することが重要になります。
凍害の劣化過程
潜伏期
凍結融解を繰り返している。変状なし。
進展期
表面にスケーリングが発生してる。
加速期
表面が荒くなり骨材が確認できる。また、錆び汁があり鉄筋が錆びている。 ひび割れ、剥離、剥落がある。
劣化期
ひどい状態。耐荷性能が低下
※重要なのは、中性化や塩害の場合、進展期では未だ表面の変状はないが、凍害に至っては、スケーリングが生じていることです。(ひび割れではありません。)
凍害の補修補強方法
中性化や塩害と同様です。ただし、脱塩工法や、再アルカリ化は行いません。
具体的には、はつり取り、鉄筋を防錆して断面修復やひび割れ注入、スケーリングなど表面が荒れている場合は、ポリマーセメントモルタルなどで仕上げを行うなどになります。
これも詳しくは、後日とします。
凍害の論文例
凍害の論文はこちらからご覧ください。
記述式が苦手と感じている方にぜひ見て頂きたい記事となっております。
【模範解答】記述式のテンプレートをコンクリート診断士が紹介!
まとめ
凍害についても単独ではなく複合劣化になる可能性が高いと思います。
この場合は、冒頭で「凍害および塩害の複合劣化と推察する。」としてその原因や調査方法、補修方法を述べていけば問題ないと思います。
診断士の論文は、一つの劣化原因として判断しない方がいいとも聞きました。それは、往々にして他にも原因が少なからずあるからです。
なかなか難しいですね。
でも、ある程度絞り込んだ上で、それを軸に論じていくことがいいと私は思います。
ただし他の可能性もあることは、「ちらつかせ」ながら記述することが大切だと思います。
疲労についても解説しています。この記事では疲労の具体的な論文も記載していますので、ぜひご覧ください。
コンクリート診断士の合格に必須 コンクリートの劣化原因である疲労を解説
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