【鉄筋の腐食(アノード・カソード)】コンクリート診断士が分かりやすく解説

鉄筋腐食メカニズム コンクリート診断士

今回は、コンクリート診断士試験で必ず出題させる「鉄筋の腐食」について、わかりやすく解説していきます。

特に重要なのがアノード・カソードです。これさえしっかり理解していれば(覚えられれば)鉄筋の腐食も問題も怖くありません。

 

近年のコンクリート診断士問題の出題はこのようになっています。

2019年:海洋コンクリート構造物における、アノード分極曲線とカソード分極曲線の語句の組み合わせを問う問題
2020年:電気防食工法に関する語句の組み合わせを問う問題
2021年:塩害に関する語句の組み合わせを問う問題

いづれも鉄筋腐食のメカニズムを理解していなければ解答できない問題です。

 

でも、このような悩みはありませんか?

考える

 

鉄筋の腐食を勉強していると、アノード、カソードが出てくるけどよくわからない。
電子や電流、電位差って、錆びにどう関係しているかよくわからない。
電気防食と錆びを合わせて勉強したい。

 

などの要望があると思います。

 

この要望に応えるべく簡潔にわかりやすく解説していきたいと思います。

 

 

人物像私は、コンクリート診断士、コンクリート主任技士を取得しています。

特に、コンクリート診断士の取得を目指している方に有益な情報を発信すること目指しています。

 

この記事を読めば、鉄筋腐食の原理が理解できるだけでなく、電気防食も理解することができます。そして、コンクリート診断士試験で必ず出題される鉄筋腐食に関する問題も解けるようになります。

 

それでは、説明していきます。

 

鉄筋がなぜ、錆びるのか

鉄筋は、アルカリの環境化では、鉄筋周囲に不動態皮膜をまとっています。でも、この不動態皮膜が破壊させると鉄筋は腐食してしまいます。つまり錆びてしまうということです。

 

ここまでは、皆さんよくお解りだと思います。

 

では、具体的にどうやって錆が発生するかを説明しています。

 

アノード・カソード反応について

不動態皮膜が破壊させると、鉄(鉄筋)は、イオン化します。

なぜイオン化するのか、簡単にいうと、酸化した方が鉄は安定するからです。

つまり、鉄は人工的に精錬され鉄になっています。もともとは酸化鉱物です。

なので、錆びついた鉄の状態の方が自然界では一番安定してる状態なのです。

鉄がイオン化するとこんな反応が起きます。

Fe =  Fe2+ + 2e-(アノード反応)

鉄が鉄イオンと電子に別れます。これは、鉄が溶けたということです。

鉄イオンは、コンクリート中に放出され、一方、電子はというと、鉄筋内部を移動するようになります。

この反応と同時に、こんな反応も起きます。

1/2・O2 + H2O + 2e-  =  2OH- (カソード反応)

この反応は、酸素と水と鉄から放出された電子が反応し、水酸化物イオンができます。

酸素と水は、コンクリートの細孔溶液中に存在しており、この量が多い場所で腐食が生じる。

この「電子のやりとり」= 「電流が流れる」 つまり、腐食電流となります。

鉄がイオン化すると周りと比べ電位が低くなります。電位が低いということは、エネルギーが高いと言いかえることができます。エネルギーが高いということをよく、山で例えられます。水が高い方から低い方へ流れるように、電子の流れも低い方から高い方へ流れます。

この原理で起電力が発生し電流が流れ始めます。

電位

錆びは、鉄から放出された鉄イオンと、水酸化物イオンがコンクリート中で反応し酸化第一鉄となります。これが初期の錆びで、反応は下のようになります。

Fe2+ + 2OH-  =   Fe(OH)2  ←酸化第一鉄(錆びの初期)

重要ポイントは、「電位差が生じる」ということです。この電位差が生じることで、電子が移動(電流が流れる)するのです。

試験で必要なこと(覚えること)
アノード反応:陽極、既設コンクリート側、酸化反応
カソード反応:陰極、断面修復側、還元反応

では、次に具体的な例を挙げて説明します。

 

既設コンクリート側と、断面修復した境界付近で激しい鉄筋腐食が発生

部分断面修復を行った場合、「既設コンクリート側と、断面修復した境界付近で激しい鉄筋腐食が発生した」という事例を聞いたことはありませんか。

この原因は、電位差になります。

当時、断面修復を施す必要がなかった既設コンクリート部は、劣化因子のアタックおよび侵入が継続している環境となっています。一方、断面修復した箇所は、劣化因子の侵入はありません。ここで、既設コンクリート側で不動態皮膜が破壊されると鉄がイオン化し電位が下がります。隣の断面修復した側は、電位の変化ありません。この状態が電位差を生じさせる原因となり、この境界の既設コンクリート側で激しい腐食を起こすことになるというわけです。

このような激しい腐食を抑制するためには、どうすればよいでしょうか。

それは、コンクリートが剥離、剥落した箇所のみ断面修復するのではなく、幅広く劣化因子の侵入の有無を調査することが重要になります。調査するとともに構造物がおかれている状況を把握し対策を練る必要があります。

具体的には、既設コンクリート部には、劣化因子の遮断を行うために表面被覆工法などを行う、または、断面修復の範囲を広くするなどの対策を行わなければなりません。

 

電気防食について考える

さらに、電気防食を考えてみます。

電気防食には、外部電源方式逆電陽極方式があります。逆電陽極方式というのは、鉄よりイオン化傾向の大きい金属(リチウムなど)を設置し、鉄を錆びさせないようにする方法になります。電源は必要ありません。

外部電源方式は、文字通り、外部から防食電流を流し防錆する方法です。外部電源方式には、2種類あります。アノード防食とカソード防食です。よく問題で出題されるのは、カソード防食です。この2つの防食方法の違いを説明すると、アノード防食は不態態領域に電位を上げ防食する方法です。カソード防食は、不活性領域に電位を下げ防食する方法です。防食できる電位は2箇所存在するため、2種類の防食があるというわけです。

 

まとめ

鉄筋はなぜ錆びるかというと、不動態皮膜が破壊されると鉄がイオン化します。イオン化すると電位が下がり電子のやり取りが発生します。(アノード反応・カソード反応)

電子のやり取りは電流が流れことを意味し、腐食電流と言われます。

この反応により鉄イオンと水酸化物イオンが反応し酸化第一鉄が生じます。これは錆びの初期段階です。

よく既設コンクリートと断面修復した境界で激しく腐食する理由は、電位差によるもので、この電位差を生じさせない対策をとることで抑制できます。

電気防食は、電位差を無くし、アノード反応が生じないようにした対策になります。一般的には、カソード防食と逆電陽極方式になります。

 

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