こんにちは、Pockyです。
今回は、いつもの解説記事とは少し違います。皆さんに問題を出します。ただし、問題そのものを解いてもらうわけではありません。
今回考えてほしいのは、
「このAI答案、どこがおかしい?」
です。
- まず、AI答案を読んでください
- あなたなら、何点をつけますか?
- では、Pockyの赤ペンを入れます
- 赤ペン①:「寒冷地だから凍結融解」で終わっていないか
- 赤ペン②:「凍結防止剤→塩害」と飛びすぎていないか
- 赤ペン③:「5年後に進行する」と書いた根拠は
- 赤ペン④:対策が「補修工法の羅列」になっていないか
- では、ここで一つ重要なこと
- Pocky式・答案診断チェック
- そして、もう一つ大事なこと
- コンクリート診断士は「診断」する試験
- だから私は「劣化推理」と呼びたい
- AI時代だからこそ、この力が重要になる
- AIに勝つ必要はない
- ただし、AIに「採点」を丸投げしない
- 「正解を覚える」のではなく、「正解を作れる人」になる
- あなたの答案は、本当に大丈夫ですか?
- 次回予告
まず、AI答案を読んでください
2025年のコンクリート診断士記述式問題を題材に、AIにA部の劣化原因と将来予測、対策について回答させたとします。AIは、次のような答案を作りました。
A部の変状原因として、寒冷地に位置していることから凍結融解作用による凍害が考えられる。また、凍結防止剤の使用により塩化物イオンがコンクリート内部に浸入し、鉄筋腐食が進行している可能性がある。
今後5年間も寒冷な環境が続くことから、凍結融解作用によるスケーリングやひび割れが進行するとともに、塩化物イオンによる鉄筋腐食も進行し、コンクリートの剥離・剥落が拡大すると考えられる。
対策として、劣化したコンクリートを除去し、鉄筋の防錆処理を行ったうえで断面修復を実施する。また、表面被覆によって水分や塩化物イオンの侵入を防止する。
どうでしょうか。一度、ここで読むのを止めてください。
あなたなら、何点をつけますか?
100点満点で考えてみてください。
① 80〜90点 かなり良い。ほぼ合格答案
② 60〜70点 方向性はいいけど、もう少し足りない
③ 40〜50点 一般論が多く、問題への対応が弱い
④ 点数をつけるのが難しい そもそも採点するには情報が足りない
どれでしょうか。
では、Pockyの赤ペンを入れます
まず、私はこの答案を見て、「知識はあるな」と思います。
凍結融解。塩化物イオン。鉄筋腐食。断面修復。防錆。表面被覆。必要な専門用語は入っています。
だから、「全然ダメな答案」ではありません。ここは大事です。AIを否定する必要はありません。むしろ、かなり良いところまで来ています。
では、何が足りないのでしょうか。
赤ペン①:「寒冷地だから凍結融解」で終わっていないか
AIは、「寒冷地に位置していることから凍結融解作用による凍害が考えられる」と書いています。それだけで間違いとは言えません。
でも、問題文には、寒冷地であること以外の情報もあります。ここを答案に使えるかどうかがポイントです。
- 温度条件
- 部位の位置
- 日射条件
- 水分供給
- 凍結防止剤
- 塩化物イオン濃度
これらを、「寒冷地だから凍害」だけで終わらせてしまうのはもったいない。
赤ペン②:「凍結防止剤→塩害」と飛びすぎていないか
次に、「凍結防止剤の使用により塩化物イオンがコンクリート内部に浸入し、鉄筋腐食が進行している可能性がある」という部分。
一見すると問題ありません。でも、診断士ならもう一歩考えたい。
本当に鉄筋位置まで塩化物イオンが到達しているのか。その判断材料は問題文にありませんか。
塩化物イオン濃度、かぶり厚さ、中性化深さ——これらを確認する。
つまり、「塩害がある」と書くのではなく、「なぜ塩害の可能性が高いと判断したのか」を書く。ここが診断です。
赤ペン③:「5年後に進行する」と書いた根拠は
AIは、「今後5年間も寒冷な環境が続くことから……」と書いています。悪くありません。
でも、5年後の状態を予測するなら、現在の状態を起点にする必要があります。
現在すでにスケーリングが確認されている → 今後も水分供給が続く → 凍結融解作用が繰り返される → 表面劣化が進行する。
さらに、塩化物イオンが鉄筋位置まで達している → 腐食が進行する可能性がある → ひび割れ・剥離・剥落につながる。
こうやって、現在→原因→進行→未来という線を引きます。
赤ペン④:対策が「補修工法の羅列」になっていないか
AIは、断面修復・防錆処理・表面被覆と書いています。工法としては分かります。
でも私は、「なぜ、この順番なの?」と聞きます。
水や塩分の供給が原因の一つなら、まず供給を抑えることを考える。そして、すでに劣化した部分を除去する → 鉄筋の状態を確認する → 必要なら防錆処理をする → 断面修復する → 表面からの水分・塩分の侵入を抑える → 点検によって再劣化を確認する。
ここまで考えて、初めて「対策」です。
では、ここで一つ重要なこと
ここまで読んで、「AI答案はダメなんだ」と思わないでください。私は、そういう話をしているのではありません。
むしろ、AI答案は非常に良い教材になります。なぜなら、「それっぽい答案」だからです。明らかな間違いなら誰でも気づきます。でも、一見正しい答案の中にある「足りない部分」を見つける。これが、今回のトレーニングです。
Pocky式・答案診断チェック
今後、皆さんがAIに答案を作らせたら、次の6項目をチェックしてみてください。
- 問題文の具体的な情報を使っているか
- 「なぜそう考えたのか」という根拠があるか
- 劣化機構がつながっているか
- 現在の状態から将来を予測しているか
- 対策が原因と対応しているか
- 再劣化や維持管理まで考えているか
この6つをチェックするだけでも、AIが作った答案を見る目がかなり変わってきます。
そして、もう一つ大事なこと
「じゃあ、この6項目を覚えればいいんですね?」と思った方。ちょっと違います。
6項目を覚えることが目的ではありません。本当に身につけてほしいのは、「なぜ、この項目をチェックするのか?」という考え方です。
コンクリート診断士は「診断」する試験
私はここが、コンクリート診断士の面白いところだと思っています。
例えば医師なら、症状を見る → 検査結果を見る → 原因を考える → 今後を予測する → 治療方法を考える、という流れがあります。
コンクリート診断士も、考え方としては似ています。
変状を見る → 調査結果を見る → 劣化原因を推定する → 劣化の進行を予測する → 補修・補強・維持管理を考える。
だから、単に「塩害とは何か」を知っているだけでは足りない。目の前の情報から、「この構造物では何が起きているのか?」を考える。これが診断です。
だから私は「劣化推理」と呼びたい
知識を持っている → 問題文を読む → 情報を拾う → 情報同士をつなげる → 劣化機構を推理する → 将来を予測する → 対策を考える → 文章にする。
この一連の流れを、私は「Pocky式・劣化推理」と呼んでいます。勝手にネーミングしました。
AI時代だからこそ、この力が重要になる
AIは、これからさらに進化します。「凍結融解について説明してください」と聞けば、非常にきれいな文章を返してくれるでしょう。「塩害の補修方法を書いてください」と聞いても、専門的な文章を返してくれます。
だから、知識を文章にするだけなら、AIがどんどん得意になります。では、人間は何をすればいいのか。
私は、「その情報を、この問題でどう使うのか?」を考えることだと思っています。
AIに勝つ必要はない
私は、「AIに負けない答案を書こう」とは言いません。むしろ、AIを使えばいい。
AIに答案を作らせる。AIに別解を作らせる。AIに弱点を指摘させる。AIに問題文から拾った情報を列挙させる。そして最後に、自分で判断する。
これが、これからの受験勉強の一つの形になると思います。
ただし、AIに「採点」を丸投げしない
ここは注意してください。
AIに「この答案は合格ですか?」と聞いて、「はい、十分です」と返ってきたから安心——これは危険です。実際の採点基準や試験委員の判断をAIが知っているわけではありません。
さらに、記述式は、一つの決まった文章だけが正解ではありません。2025年の実際の合格者再現答案を見ても、2人の答案には異なる表現や着眼点があります。それでも、問題文の情報を根拠にしながら、原因、将来予測、対策を論理的につないでいます。
ここに大きなヒントがあります。
「正解を覚える」のではなく、「正解を作れる人」になる
これが今回の記事で一番伝えたいことです。
過去問の模範答案を覚える → 似た問題が出る → 覚えた文章を書く。これだけでは、初めて見る問題への対応が難しくなります。
一方、問題文を読む → 情報を拾う → 劣化を推理する → 根拠を確認する → 将来を予測する → 対策を考える → 文章にする。この力があれば、初めて見る問題でも戦えます。
私は、こちらを目指してほしいと思っています。
あなたの答案は、本当に大丈夫ですか?
最後に、もう一度だけ。
AIに答案を書かせること自体は、悪いことではありません。むしろ、非常に便利です。
でも、AIが作った答案=合格答案ではありません。そして、模範答案=丸暗記するものでもありません。
大切なのは、「この答案は、問題文の何を根拠にしているのか?」と自分に問いかけること。そして、「なぜ、この劣化が起きているのか?」を自分の頭でつなげること。
AIに答案を書かせる。そして、自分で答案を診断する。この習慣をつけてください。
AIがどれだけ進化しても、最後に「この答えでいい」と判断する力。そこは、受験生自身が身につけておく必要があります。
私はこれから、「Pocky式・劣化推理」を軸に、コンクリート診断士の記述式対策をさらに深掘りしていきます。
次回予告
次回は、さらに実戦的にいきます。
「このAI答案、あなたならどこを直しますか?」という形式で、実際の答案を一文ずつ見ながら、Pockyが赤ペンを入れていきます。
「この一文は残す。」「ここは問題文の情報を入れる。」「ここは言い切りすぎ。」「ここは原因と結果をつなぐ。」
そんなふうに、答案を”診断する”練習をしていきましょう。
AIに答案を書かせるだけでは、もったいない。AIを使って、答案を見る目を鍛える。これが、これからのコンクリート診断士記述式対策です。


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