【第3話】コンクリート診断士 記述式の添削実例 設問の意図から外れる答案とは

コンクリート診断士

こんにちは。Pochyです。

前回の第2話では、コンクリート診断士の記述式問題について、設問ごとに回答を整理することの重要性を解説しました。

問1では、変状①〜④について、それぞれ原因と根拠を整理して書く必要があります。

しかし、答案を添削していると、もう一つ気になることがあります。

それは、専門知識を持っているのに、詳しく説明しようとするあまり、肝心の設問への回答がぼやけてしまうことです。

「劣化メカニズムを詳しく説明すれば、評価されるのではないか」

そう考える方もいるかもしれません。

もちろん、専門知識は必要です。ただし、知識を詳しく書くことと、設問に適切に答えることは同じではありません。

今回は、これまでに見てきた復元論文の添削事例を踏まえ、答案のどこに注意すればよいのかを考えていきます。

なお、公式の採点基準や個別の採点結果は公表されていないため、特定の記述が減点対象になると断定するものではありません。あくまで、答案の論理性と説得力を高めるための解説です。

1.詳しく書くことが、必ずしもよい答案につながらない理由

例えば、コンクリートにひび割れが発生しているとします。

このとき、ひび割れの発生原因として、乾燥収縮、温度応力、鉄筋腐食、疲労など、さまざまな劣化や損傷のメカニズムが考えられます。

それぞれのメカニズムを詳しく説明すること自体は、専門知識の確認という意味では有用です。

しかし、問題が「写真に示す変状の原因を推定し、その根拠を説明せよ」という内容だった場合、必要なのはメカニズムの一般的な解説だけではありません。

  • 写真から、どのような変状が確認できるのか
  • 問題文や構造条件から、どのような原因が考えられるのか
  • なぜ、その原因だと判断したのか

これらを結び付けて説明する必要があります。

重要なのは、知識をどれだけ書いたかではなく、与えられた情報を使って、設問に対する判断を説明できているかということです。

2.【添削実例】ひび割れを見て、原因を決めつけていないか

これまでの復元論文には、ひび割れの方向や雨水の影響などを根拠に、疲労による損傷を疑う答案がありました。

もちろん、疲労が原因である可能性を検討すること自体は間違いではありません。

ただし、ひび割れの方向だけで疲労が原因だと断定するには、情報が不足している場合があります。

例えば、次のような書き方を考えてみます。

改善前の考え方

「横方向のひび割れが発生しているため、疲労による損傷と考えられる。また、雨水の浸入によって劣化が進行している。」

この説明では、横方向のひび割れと疲労を結び付けた根拠が十分に示されていません。また、雨水がどのように劣化に関係しているのかも曖昧です。

改善後の考え方

「横方向のひび割れが確認される。ただし、ひび割れの方向だけでは疲労が原因とは断定できない。ひび割れの分布や幅、発生位置、交通荷重との関係などを確認し、原因を判断する必要がある。また、ひび割れからの水の浸入は、劣化を進行させる要因となる可能性がある。」

このように整理すると、確認できている事実と、そこから導く推定を区別できます。

ただし、実際の試験答案では、設問が求める内容や字数に応じて、必要な部分を簡潔にまとめることが大切です。

また、問題文に疲労を裏付ける情報が示されている場合には、その情報を根拠として使います。何でも断定を避ければよいという意味ではありません。

3.【2026年度の問題】写真に写っている変状だけで判断していないか

2026年度の記述式問題では、表面被覆の膨れ・剥離や白亜化、白色析出物、ひび割れなどが示されていました。

このような問題では、写真に写っている変状だけでなく、問題文や表に示された情報も重要になります。

例えば、S1の表面被覆については、被覆材の仕様や補修履歴が示されています。S2についても、橋面舗装のひび割れ、伸縮装置付近の構造条件などを踏まえて考える必要があります。

単に「表面被覆が劣化した」「水が浸入した」と書くだけでは、なぜその原因を推定したのかが十分に伝わらない場合があります。

一方、問題文の情報をすべて書き写せばよいわけでもありません。

必要なのは、与えられた情報の中から、原因の推定に関係するものを選び、判断の根拠として使うことです。

写真や表を見たときには、次の3点を確認してみてください。

  1. どのような変状が確認できるか。
  2. その変状に関係する構造条件や補修履歴は何か。
  3. それらの情報から、どのような原因が考えられるか。

この順番で考えると、知識の説明だけで終わらず、問題に即した答案を組み立てやすくなります。

4.答案を改善するための3つの手順

では、実際に答案を書くときには、何を意識すればよいのでしょうか。

私がおすすめするのは、次の3つの手順です。

手順① まず、設問の要求を確認する

原因を問われているのか、将来予測を問われているのか、それとも調査・補修方法を問われているのか。

最初に、設問が求めている回答を明確にします。

手順② 根拠となる情報を選ぶ

写真、表、構造条件、補修履歴、数値などから、回答に必要な情報を選びます。

関係の薄い知識を追加するよりも、判断に必要な情報を正確に使うことを優先します。

手順③ 判断と根拠を結び付ける

「何が確認できるのか」「何が原因と考えられるのか」「なぜそう判断したのか」を整理して文章にします。

これだけでも、説明の方向性が明確になります。

5.記述式では、知識を並べるだけでなく、判断を説明する

ここまで、詳しく書きすぎることで設問への回答が曖昧になるケースと、その改善方法について解説しました。

もちろん、専門知識を十分に身に付けることは大切です。しかし、試験では、知識を持っていることと、その知識を問題に応じて使えることを区別して考える必要があります。

答案を書き終えたら、次の3点を確認してみてください。

  • 設問で問われた内容に、直接答えているか。
  • 自分の判断を裏付ける根拠を示しているか。
  • 一般的な知識の説明に偏り、肝心の回答が曖昧になっていないか。

この確認を繰り返すことで、答案の構成や説明の仕方を改善できます。

なお、ここで紹介したポイントは公式の採点基準ではなく、復元論文の分析から整理した実践的な考え方です。実際の評価は、設問の要求や答案全体の内容などによって異なります。

次回予告

次回は、原因推定をさらに掘り下げます。

「その原因、本当に断定できますか? 事実と推定を区別する答案の書き方」

写真から読み取れる事実と、そこから推定する劣化原因をどのように整理すればよいのか。実際の復元論文を題材に、もう一歩踏み込んで解説します。

それでは、また次回の記事でお会いしましょう。

【第2話】コンクリート診断士 記述式の減点ポイント「①〜④まとめ書き」が命取りになる理由

第1話【添削実例】コンクリート診断士 復元論文、どこが惜しかったかを総評します

 

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