「この答案、合格ラインに届いている?」を診断士目線で考える
こんにちは、Pockyです。
前回の記事では、コンクリート診断士2025年記述式問題をChatGPTに解かせ、「AIって、ここまで書けるのか……」というところからスタートしました。
文章としてはきれい。専門用語も入っている。劣化原因も書いている。将来予測もしている。対策まで書いている。
正直に言います。かなりよくできています。
では、この答案をそのまま試験答案として提出したらどうでしょうか。
今回は、私が実際に「受験生の答案を添削するつもり」で、AI答案に赤ペンを入れてみます。
まず、AI答案をもう一度見てみる
今回の例では、AIに2025年のA部について回答させたとします。AI答案は、おおむね次のような内容です。
A部の変状原因として、凍結融解作用や水分の浸入による劣化が考えられる。寒冷地に位置していることから、コンクリート内部の水分が凍結と融解を繰り返すことで、スケーリングやひび割れ等が発生したと考えられる。また、凍結防止剤の影響により塩化物イオンが浸入し、鉄筋腐食が進行する可能性がある。
今後も劣化が進行すると、コンクリートの剥落や鉄筋腐食が進行する可能性があるため、劣化部を除去したうえで断面修復を行い、鉄筋の防錆処理や表面被覆を実施する。
さて。皆さんは、この答案を読んでどう思いますか。
「十分じゃない?」——そう思った方もいるかもしれません。私も、一般論として大きく間違っている答案とは思いません。
でも、ここからが診断士です。
赤ペン①:「寒冷地だから凍結融解」だけで終わっていないか
AI答案では、「寒冷地に位置しているため、凍結融解作用が考えられる」という流れになっています。方向性は理解できます。
しかし問題文には、もっと情報があるはずです。
- 東北地方の山間部
- 気温条件
- A部の位置
- 日射条件
- 凍結防止剤
- 水分の供給
これらを全部「寒いから凍結融解」の一言で終わらせるのは、少しもったいない。
ここで一歩踏み込む
なぜ、この場所で凍結融解が起きやすいのか。
寒冷な環境にある → コンクリート内部に水分が存在する → 温度低下によって水分が凍結する → その後、温度上昇によって融解する → これが繰り返される → コンクリート組織にダメージが蓄積する → スケーリング等につながる。
これなら「凍結融解だから凍害」という知識の丸暗記ではありません。問題文の条件を使って、劣化のメカニズムを説明しています。
赤ペン②:「凍結防止剤」は書いただけになっていないか
AI答案には「凍結防止剤の影響により塩化物イオンが浸入し、鉄筋腐食が進行する可能性がある」とあります。方向性としては理解できますが、ここでも一つ考えたい。
「凍結防止剤がある」だけで、鉄筋腐食まで一気に飛んでいないか——です。
答案を書くなら、こういう流れを意識したい。
凍結防止剤を含む水 → コンクリートへの水分供給 → 塩化物イオンの浸入 → 鉄筋位置まで塩化物イオンが到達 → 腐食発生条件 → 鉄筋腐食 → ひび割れ・剥離・剥落
原因と結果の間を、一つずつつなぐ。これが重要です。
赤ペン③:問題文の「数字」を使えているか
ここは非常に重要です。コンクリート診断士の記述式問題では、「なぜ、この数字が書いてあるのか」と考えてみてください。
塩化物イオン濃度、中性化深さ、かぶり厚さ、残存膨張量、温度——こうした数字は、単なる飾りではありません。診断の根拠になる情報です。
だから「塩害が考えられる」だけではなく、「塩化物イオン濃度が鉄筋腐食を判断するうえで重要な水準に達している」など、問題文のデータを根拠として使う。ここで答案の説得力が変わります。
赤ペン④:「5年後」の予測が少し弱い
AI答案では「今後も劣化が進行し、ひび割れや剥落が拡大する可能性がある」となっています。間違いとは言えませんが、私は「なぜ進行するの?」と聞きたくなります。
現在すでに劣化が確認されている → 今後も凍結融解環境が続く → 水分供給も続く → 凍結融解作用が繰り返される → さらに塩化物イオンも供給される → 鉄筋腐食が進行する可能性がある → ひび割れ・剥離・剥落が拡大する。
現在の状態から未来へ線を引く。これが本当の「将来予測」です。
赤ペン⑤:対策が「工法のカタログ」になっていないか
AIは、断面修復・鉄筋防錆・表面被覆などを簡単に出してきます。どれもコンクリート補修では重要な選択肢です。
しかし試験では、「なぜ、その対策なのか」まで考えたい。水分・塩化物イオンの供給が劣化進行の原因なら、まず供給を抑える考え方があります。そのうえで、
劣化したコンクリートを除去する → 鉄筋の状態を確認する → 必要な防錆処理を行う → 断面修復する → 表面からの水分・塩分の侵入を抑制する → その後の点検で再劣化を確認する。
ここまでつながっていれば、「工法を知っている答案」から「診断して対策を選んでいる答案」になります。
ここまで赤ペンを入れてみると
AI答案が悪いわけではありません。むしろ、かなり良い。
ただ、「一般的に正しいこと」から「この問題だから、この答えになる」というところまで、もう一段掘り下げたい。ここが今回のポイントです。
Pockyなら、こういう順番で答案を作る
私なら、いきなり文章を書きません。まず頭の中で、こう整理します。
① 環境(寒冷地)→ ② 劣化要因(凍結・融解、水分、凍結防止剤)→ ③ 劣化機構(凍結融解+塩化物イオンの影響)→ ④ 根拠(問題文の温度、位置、塩化物量など)→ ⑤ 現在の状態(スケーリング、ひび割れ、鉄筋腐食等)→ ⑥ 将来予測(劣化要因が継続すれば変状が進行)→ ⑦ 対策(水・塩分の供給抑制+劣化部補修+防錆+維持管理)
そして最後に文章にします。
これが「Pocky式・劣化推理」
私が受験生の皆さんに身につけてほしいのは、「この文章を暗記してください」ではありません。むしろ、文章を忘れても、自分で作れるようになってください。
そのために、問題文 → 情報を拾う → 劣化要因を整理 → 劣化機構を推理 → 根拠を確認 → 将来予測 → 対策 → 文章化 という「思考の型」を持っておく。
これが私の考える、Pocky式・劣化推理です。
そして、AIを使うならこう使ってほしい
ここまで読んで、「じゃあChatGPTは使わないほうがいいの?」と思った方。私は逆だと思っています。使ってください。
ただし、「答えを作ってもらう」だけではもったいない。例えばAIに、こう質問してみてください。
- 「この答案では、問題文のどの情報を根拠として使っていますか?」
- 「問題文の情報を使えていない部分を指摘してください。」
- 「原因→劣化機構→将来予測→対策の論理がつながっていない部分を指摘してください。」
こうすると、AIが答案作成者ではなく、答案のチェック役になります。これは非常に面白い使い方です。
でも、最後に判断するのは自分
ここが一番重要です。AIに「この答案は100点ですか?」と聞いても、それをそのまま信じてはいけません。
なぜなら、AIは問題文を読んで文章を作ることはできても、試験委員の採点基準そのものを知っているわけではないからです。
AIに答案を作らせる → AIに答案をチェックさせる → そして最後は、自分で問題文と答案を見比べる。
この習慣をつけてください。
これからの記述式対策は変わる
昔は「過去問を解く」「模範答案を覚える」「テンプレートを覚える」という勉強法でも、ある程度対応できました。もちろん、今でも基礎知識や文章構成を身につけることは重要です。
でも、問題文に複数の情報が与えられ、「この情報をどう判断するのか」が問われる問題では、丸暗記だけでは対応しにくくなっています。
だから私は、「答えを覚える教材」ではなく、「答えを組み立てるための教材」を作っていきたいと思っています。
AIが答えを作る時代だからこそ
最後に、受験生の皆さんへ。
AIは、これからもっと賢くなります。きれいな文章も、専門的な文章も、それらしい模範答案も、簡単に作れるようになるでしょう。
でも、
「この問題では何を書くべきなのか?」 「この数字は何を意味しているのか?」 「この劣化は本当に進行するのか?」 「この対策で原因を抑えられるのか?」
こうしたことを自分で考える力は、やはり必要です。
だから私は、AIと文章生成能力で競うつもりはありません。私が皆さんに伝えたいのは、「答案を見る目」です。そして、「問題文から劣化を推理する力」です。
AIに答案を書かせてもいい。でも、その答案を鵜呑みにしない。最後に答案を診断するのは、自分です。
これからのコンクリート診断士記述式対策では、「答えを書く力」だけではなく、「答えを見る力」を。
私は、そこを一緒に鍛えていきたいと思っています。


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