【コンクリート診断士合格に必須】コンクリート診断の調査方法を解説

学習 コンクリート診断士

この記事ではコンクリート診断士が補修・補強方法を決定するために必要な調査方法について説明していきます。

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これまで、劣化の種類を特定する調査方法を記載してきました。

例えば、中性化ならフェノールフタレイン溶液を噴霧するとか、塩害なら、重量法とか、この劣化原因はどれに該当するかの調査でした。

しかし、今回の調査方法は、補修または補強がどれくらいのレベルで必要なのかを特定する調査方法になります。

具体的には、単なるひび割れ充填や断面修復でいいのか、それとも鋼板接着、巻き立て、連続炭素繊維シートによる補強をする必要があるのかを決めるものです。

この判別をするためには各劣化の種類のメカニズムがよくわかっていないと、どの調査が必要なのか判断できません。

この辺りを意識しながら説明をしていければと思います。

 

人物像私は、コンクリート診断士、コンクリート主任技士を取得しています。

特に、コンクリート診断士の取得を目指している方に有益な情報を発信すること目指しています。

1,コンクリート強度の確認なぜ

コンクリート強度の調査がなぜ必要なのか?

① 当時建造された設計図書に記録がない場合
② 劣化を調査する上で現状の強度を調査する必要がある場合

などが考えられます。

ここでは②について考えていきたいと思います。

今までの劣化でコンクリート強度の低下が発生するものはどれだったでしょうか?

そうです。

火害です。500℃以上受熱するとコンクリートの強度が低下しました。なので、火害を受けた場合、それを証明するためにコンクリートの色と合わせて強度を把握することが大切です。

また、強度低下により補修なのか補強なのかを決定します。

一般には、コアを採取して圧縮強度を測定する流れです。

コア以外にもコンクリート強度を調査する方法がありますので種類を述べます。

プルオフ法
・プルアウト法
・ブレイクオフ法
・テストハンマー
・空気式圧ピン貫入法

※これら調査方法の特徴は把握しておく必要があります。4 択問題で出題されることがあります。

2.コンクリートの静弾性試験について

これはコンクリート剛性を測定するための試験です。

劣化の種類では、主にASR や火害の劣化過程を調査する場合に必要になります。

ASR では、コンクリートの外部だけでなく、内部にもひび割れが生じます。そのため、コンクリートとしての強さ(圧縮強度ではない)みたいなものが低下します。

なんとなくイメージでわかると思います。

火害では、受熱すると弾性係数が低下します。その証拠を得るために調査が必要になります。弾性係数が低くなるとコンクリ―トに補強や打ち換えが必要になってきます。

そういう位置づけの試験になります。

3.ひび割れ、埋設物、空洞、部材厚、鉄筋の調査方法について

この調査方法は、現状の構造物がどんな状態にあるのかを調査するものです。

外観からはわからない部分を把握するものです。

例えば、ひび割れが発生していれば、その深さを把握する必要があります。

また、コンクリート内部に塩ビ管などの埋設物があるかもしれません。さらに、部材厚がどれくらいあるのかを把握したい、加えて、鉄筋はどのあたりに配置されているかを把握したりします。

このように構造物を詳細に調査することで、ひび割れ注入でいいのか、それとも、断面修復でいいのか、または、削孔したい場合、埋設物や鉄筋等がどこにあるかを把握して削孔場所を変えたりできます。

種類としては、このようなものがあります。

・AE(アコースティックエミッション)
・打音法                                         ・衝撃弾性波法
・超音波法
・X 線法
・電磁誘導法
・電磁波レーダ法
・サーモグラフィ法

※調査方法の特徴を整理しておく必要があります。

4.鉄筋の腐食状況を把握する試験方法について

この調査は重要だと思います。記述式でも調査方法を求められる場合があります。

どの劣化現象も最終的には鉄筋が腐食します。

中性化では、中性化(CO2が侵入)することでPH が低下し不動態皮膜が破壊され鉄筋が腐食します。

塩害も塩分量がたまると同様な現象が起きます。

ASR もひび割れが発生します。そのひび割れが大きく深くなると劣化因子の侵入で鉄筋が腐食します。

凍害や火害、疲労、化学的侵食も同様です。

ひび割れが発生するとそこから劣化因子(CO2、O2、水)が入り込みます。

鉄筋が錆びると構造物の耐荷性能が低下してしまいます。

そのため、鉄筋の状態を把握することは非常に大切になります。

鉄筋が腐食している範囲はどれくらいなのか、どくらいの速度で錆びるのか、錆びやすさはどれくらいなのか、錆びによってどれくらい鉄筋が損傷しているのか、を知ることで補修法等が変わってきます。

その調査方法を簡単に述べます。

・自然電位法(錆びの範囲を調査)→補修範囲の決定
・分極抵抗法(錆びる速度を把握する)→構造物がどれくらい耐えられるかの目安
・電気抵抗法(錆びやすさを評価する)
・鉄筋の腐食面積率(錆が鋼材の質量をどれだけ減少させたか)

※これは何度も言いますが重要です。特徴をよく理解しておいてください。

論文では、自然電位法を書いていればいいと思います。大体鉄筋がさびているため、その範囲を把握するために必要となります。

それでは、自然電位特徴を述べます。

・鉄筋およびコンクリート表面に被覆されるものがあれば調査できない。
・絶縁材料が使用されていれば調査できない。
・コンクリート表面が非常に乾燥していれば測定できない。
・水で覆われていれば調査できない。
・測定する場合は、湿潤状態でなければならない。
・電位を調査する照合電極には、銅硫酸銅電極などがある。
・自然電位は、-0.35 以下は錆びている。-0.2~-0.35 は不明、-0.2 以上は腐食なしなどです。

他の方法も何度も言いますが、特徴を整理しておいて下さい。

5.コンクリートの配合・成分調査について

この調査も4 択問題で出題されるものです。

論文にはまず書くことがないと思います。

この調査は、コンクリートの種別がわからない場合に行う調査方法です。つまり昔に建造され調査記録がない中で、どんなコンクリート配合で作られたのかざっくり調べる方法です。

・セメント協会法 (酸化カルシウムを定量する方法)
・グルコン酸ナトリウムを用いる方法(炭酸カルシウムを除くセメント成分を調査できる方法)
・フッ化水素酸を用いる方法(炭酸カルシウムを除くセメント成分を調査できる方法)
・ICP(酸可溶性シリカに着目)
・SEM(成分全般を把握)
・EPMA(成分全般を把握)

※この辺りも特徴を整理しておく必要があります。

簡単にまとめると、セメント協会法では多くのカルシウムを定量してしまうため精度があまり高くないという現状があります。

それを改良したものが、グルコン酸とフッ化水素酸です。石灰石骨材や貝殻などの炭酸カルシウムを除外できる特徴があります。

注意すべきは、この2つの調査方法は、中性化したコンクリートには使用できないという特徴があります。なので、中性化および火害、化学的侵食による中性化したコンクリートには使用できないということになります。

6.まとめ

簡単に述べましたが、調査方法の特徴は参考書等で整理をお願いします。

もう一度簡単に整理します。

劣化の種類を特定するものではなく、どの程度(レベル)の補修および補強が必要なのかを判断する調査方法になります。

具体的には

・中性化によって鉄筋が腐食していたので、腐食範囲を特定するために自然電位法で調査する。
・火害によって損傷した部分のコンクリートの剛性を確認するため、静弾性試験を行う。
・疲労によってどれくらい性能低下があるのかを把握するため、載荷試験を実施する。
・火害によって損傷した部分の鉄筋性能を調査するため、鉄筋の引張試験を行う。
・塩害によって損傷した鉄筋の性能低下を調査するため、鉄筋の腐食表面率を参考とした。
論文に使えるものです。

悪い例

・火害によって損傷した部分のコンクリートの強度を確認するため、空気式圧ピン貫入法を用いた。(この方法は、吹き付けコンクリートの強度を測るもの)
・中性化によって鉄筋が腐食していたので、腐食しやすさを評価するため電気抵抗法で調査する。(腐食のしやすさを調査するより範囲を把握する方が大切である。間違いではないが、既に腐食しているので補修方法を提案することができる調査方法を選択する方がよい。)

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