コンクリート診断士の合格に必須 コンクリートの劣化原因であるASRを解説

ASR表題 コンクリート診断士

今回はコンクリートの劣化要因の一つであるアルカリシリカ反応(ASR)について解説したいと思います。

 

人物像私は、コンクリート診断士、コンクリート主任技士を取得しています。

特に、コンクリート診断士の取得を目指している方に有益な情報を発信すること目指しています。

 

アルカリシリカ反応(ASR)は、中性化および塩害とは異なり、コンクリート中に使用されている材料に問題があることで劣化します。それは、シリカ鉱物です。中性化や塩害は、外部からCO2や塩分が侵入していますが、アルカリシリカ反応(以ASRとする)は、粗骨材や細骨材に含まれるシリカ鉱物が悪さします。要するに製造時点から入っているというわけです。フレッシュなコンクリートの場合は、粗骨材等が「無害である」ことの確認として(試験成績表に記載があり)、化学法やモルタルバー法を行います。また生コン全体としてアルカリ総量などを確認しています。これらの方法は、あくまでもフレッシュコンクリートを検査するものであり、硬化したコンクリートの確認ではありません。この辺りが整理できる様に解説していければと思います。

アルカリシリカ反応のメカニズム

コンクリート中のアルカリ分が細孔溶液に溶け出します。そうすると水酸化アルカリ(強アルカリ)になります。その水酸化アルカリが、反応性鉱物と反応します。反応したものがアルカリシリカゲルです。このアルカリシリカゲルは水を吸収する性質があります。水を吸収するということは膨張するということです。コンクリート内部で膨張するとコンクリート表面に不規則なひび割れが発生します。この反応は施工後ゆっくり時間をかけてひび割れが発生するものなので10年くらいの時間がかかります。

アルカリ総量が規制されている理由は、まずアルカリ分を少なくしようということです。アルカリ分が多いとそれだけ細孔溶液中にアルカリ分が流れ出る量が増えASRを進行させる原因になります。

【簡潔な説明】

  • アルカリ分が溶け出す。

  • それが反応性鉱物と反応する。

  • そうるすとアルカリシリカゲルができる。

  • アルカリシリカゲルが水を吸収することで膨張する。

↓(水がなければ膨張しない)

  • コンクリートにひび割れが発生する。

アルカリシリカ反応の調査方法

ASRの調査方法は沢山ありますが、どのカテゴリーに入るかを整理できれば問題ないと思います。また、メカニズムを理解すれば何となく調査内容のイメージがつくと思います。それは、アルカリ分の調査、反応性骨材の調査、コンクリートが膨張するためそれが判明する調査、の3つになります。加えて、フレッシュコンクリートを製造する時の方法なのか、既設構造物から採取して行う調査になるのかパターンが分かれます。

アルカリ分の調査(既設構造物から採取し調査する)

・熱水 … 煮沸するとアルカリ分が溶出する。

・振とう… 常温で振ればアルカリ分が溶出する。

・強酸 … 過塩素酸でアルカリ分が溶出する。

・圧縮 … 500N/m2まで加圧してアルカリ分を採取する。

・原子吸光度法 … 原子吸光度計という装置で波長を出し原子レベルで把握する。

・ICP … ICPという装置により元素レベルで調査する。

※下の2つの方法は、原子レベルで調査できるため、何でも調査できます。つまり、コンクリート中の成分が変化するものであれば何でも調査できます。

この調査試料は、コンクリートを微粉末にします。

反応性骨材の調査

・化学法(生コン製造前に調査)

・モルタルバー法(生コン製製造前に調査)

・促進モルタルバー法(生コン製造前に調査)

・偏光顕微鏡で骨材の種類を調査する方法

(生コン製造前に調査、既設構造物で調査しますが、主には既設構造物です。)

・走査型電子顕微鏡(SEM)は、低倍率でアルカリシリカゲルを調査する。

(既設構造物で調査)

・酢酸ウラニル蛍光法は、アルカリシリカゲルを調査する。(既設構造物で調査)

※これらの詳細は、覚える必要があります。参考書を確認してください。

コンクリートの膨張性を調査

・残存膨張率試験

・カナダ法(アルカリ溶液浸漬法)

・デンマーク法(飽和NaCl溶液浸漬法)

※既設構造物からコアにより採取し、温度、湿気、溶液下で保管し供試体の膨張

があるかないかを調査します。詳細は参考書で確認してください。これも重要です。

アルカリシリカ反応に係る反応性鉱物

では実際に反応性鉱物にはどんなものがあるのかを整理していきます。②で調査方法を述べましたが、使用されてきた骨材の中には、その調査をすり抜けているものをあります。それはどんなものなのかといると、時間をかけてゆっくり反応するものや、粘土質に吸着しその時の調査から逃れたものなど様々です。そのため、現在でも多くの構造物がASRを引き起こしています。また、反応性鉱物が多ければ反応性が高いというわけではなく、ペシマム量で決まります。

実際、反応性鉱物の種類は結構あります。まず、ASRの反応速度が急速なのか、遅延なのかで分類します。(岩石は鉱物が集まってできる)

反応性(急速)

・火山岩-安山岩

・トリジマイト、クリストバライト、火山ガラス、オパール、カルセドニー

・流紋岩(火山岩の一種でSiO2が70%以上のもの)

反応性(遅延)

・チャート・頁岩

(堆積岩の一部)

・微晶質または隠微晶質の石英

・ホルンフェルス(変成岩の一部)

・微晶質または隠微晶質の石英

・断層岩

・マイロナイト(深い部分)、カタクレーサイト(浅い部分)

・様々な岩石に含まれる

・モンモリロナイト(粘土鉱物で岩石に含まれている)

・バーミキュライト(粘土鉱物で岩石に含まれている)

岩石の種類

チャート… ごく微細なシリカ(二酸化ケイ素:SiO2)が深海底で降り積もってできた岩石

火山岩 … シリカの多い火山岩。火山岩は、マグマが冷え固まってできた岩石で、地上もしくは比較的浅い地下で固まった岩(流紋岩(シリカ多い)、安山岩(シリカ中程度)も含まれる)

堆積岩 … 水中で砂や泥などが堆積したものが、長い時間をかけて押し固められて岩石

変成岩 … もともと堆積岩や火成岩であったものが、高温や高圧などの条件にさらされて、鉱物組み合わせや組織が変化したもの

断層岩 … 地下の断層がずれ動いたときに、岩盤が剪断変形をするのにともなって形成される、脆性および延性剪断帯を構成する変形岩

アルカリシリカ反応の劣化過程

簡単に述べます。

潜伏期:アルカリシリカゲルが生成されている状況(外観の変状なし)

進展期:コンクリート表面にひび割れが発生している。

加速期:このひび割れ幅が大きく、長さも長くなり、錆び汁も発生している。

劣化期:耐荷性の低下

※中性化と塩害との違いは、進展期でひび割れが発生しているところです。

アルカリシリカ反応の補修・補強方法

これについては、後で他の劣化現状と交えて述べますが、基本的な事項を述べます。

まず、現状を修復して、必要な補修または、補強を行います。具体的には、ASRでひび割れが発生し鉄筋が錆び、剥落しているとします。この補修方法で亜硝酸リチウムを内部圧入したい場合は、ひび割れにより錆びや剥落を補修した後に施工しなければなりません。後で補修を行えば、その補修した部分には亜硝酸リチウムが浸透していないことになります。初期に行う補修方法は、中性化や塩害と同じになります。その後に他の補修方法を行うことになります。

論文対策

論文はこちらからご覧ください。

記述式を苦手と思っている方に必見な記事です。ぜひご覧ください。

【模範解答】記述式のテンプレートをコンクリート診断士が紹介!

論文の補足説明

コンクリートの静弾性試験は、圧縮強度とは異なります。コンクリートの剛性がわかります。無数のひび割れがコンクリート内部で発生していれば、剛性が低下します。剛性が低下すれば、耐荷性能が低下します。次に亜硝酸リチウムです。これはASR対策に有効です。亜硝酸系は鉄筋の防錆効果があり、リチウムはASRの反応を抑制します。リチウムには水を吸収する役割があります。そのため、アルカリシリカゲルが水を吸収できなくするので膨張できないという原理です。

まとめ

ASRが起きる要因は、反応性鉱物、アルカリ分が多い生コンの使用、水です。

この要因の1つでも欠けるとASRは発生しません。

これで調査方法や反応性鉱物を覚えるとASRは完璧です。

今はなんとなく理解できていればいいと思います。これから少しずつ問題等をやっていくことで覚えたことが点から線になっていくと思います。地道に頑張りましょう。

凍害についても解説しています。この記事では凍害の具体的な論文も記載していますので、ぜひご覧ください。

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