【シリーズ第5弾】コンクリート診断士の記述式 AI答案の弱点を見抜く答案診断【実戦①】

コンクリート診断士

【実戦問題①】あなたはこのAI答案の弱点に気づけますか?

こんにちは、Pockyです。

前回の記事では、「AIは答案を書ける。でも、その答案が本当に問題に答えているかを判断できますか?」という話をしました。

前回の記事:「この答案、本当に合格答案ですか?」

今回は、その続きです。今回は説明だけではありません。実際にあなた自身に答案を診断してもらいます。

 

いきなり問題です

次の問題文を読んでください。

ある橋梁について、次のような状況が確認されています。

  • 寒冷地に位置している
  • 冬期には凍結防止剤が散布されている
  • 構造物の一部は日射を受けやすい
  • コンクリート表面にはスケーリングが確認されている
  • 一部にひび割れや剥離が見られる
  • 鉄筋付近では塩化物イオンの侵入も確認されている
  • 今後も長期間供用する予定である

そこで、AIに原因と今後の対策について答案を書かせてみました。

 

【AIが作った答案】

本橋の劣化原因として、寒冷地であることから凍結融解作用による凍害が考えられる。また、凍結防止剤の散布によって塩化物イオンがコンクリート内部に侵入し、鉄筋腐食が生じている可能性がある。

今後も劣化が進行すると、ひび割れや剥離・剥落が発生し、鉄筋腐食が進行する可能性がある。

対策として、劣化したコンクリートをはつり取り、鉄筋の防錆処理を行った後、断面修復を行う。また、表面被覆を行うことで水分や塩化物イオンの侵入を防止する。

補修後は定期的な点検を実施し、劣化状況を確認する。

 

どうでしょうか。かなりよく書けています。専門用語も入っています。原因も書いています。将来予測もあります。対策もあります。維持管理にも触れています。

だから、「これなら十分じゃない?」と思った方もいるかもしれません。

でも、ここで一度止まってください。

 

あなたなら何点つけますか?

ここでは点数をつける必要はありません。代わりに、次の6項目をチェックしてください。

□ ① 問題文の情報を使っているか □ ② 診断の根拠があるか □ ③ 劣化機構がつながっているか □ ④ 将来予測に根拠があるか □ ⑤ 対策が原因に対応しているか □ ⑥ 再劣化・維持管理まで考えているか

 

ここで一度、スクロールを止めてください

できれば紙に、①○・△・× ②○・△・×……と書いてみてください。特に「この文章のどこが惜しいのか?」を考えてみてください。

答えはこの下です。

 

↓↓↓

Pockyの赤ペン添削

それでは、一つずつ見ていきます。

 

① 問題文の情報を使っているか 判定:△

AI答案には、「寒冷地であることから凍結融解作用による凍害が考えられる。」とあります。間違いではありません。しかし、「寒冷地だから凍害」だけでは少し弱い。

問題文には、日射を受けやすいという情報もあります。ここは重要です。

日中に融解する → 夜間に再凍結する → 凍結融解の繰返しが生じる、というように、問題文の情報を劣化機構につなげることができます。

 

② 診断の根拠があるか 判定:△

AI答案では、「凍害が考えられる」「鉄筋腐食が生じている可能性がある」としています。しかし、「なぜそう判断したのか」が十分ではありません。

診断士の答案では、判断→根拠という順番だけでなく、問題文の事実→推理→判断という流れを意識してください。

例えば、

寒冷地であり、冬期に凍結防止剤が散布され、さらに日射による融解と夜間の再凍結が繰り返される環境であることから、凍結融解作用によるスケーリングが進行したと考える。

この方が、「なぜ凍害と判断したのか」が伝わります。

 

③ 劣化機構がつながっているか 判定:△

ここは今回、一番見てほしいところです。

AI答案では、凍結融解・塩化物イオン・鉄筋腐食という言葉が出ています。でも、少し「並んでいる」だけです。

ここを、

凍結融解作用 → コンクリート表層の劣化 → 水分・凍結防止剤の浸入 → 塩化物イオンの侵入 → 鉄筋腐食 → ひび割れ・剥離・剥落

とつなげて考えます。これが、「劣化機構を推理する」ということです。

 

④ 将来予測に根拠があるか 判定:△

AI答案では、「今後も劣化が進行すると、ひび割れや剥離・剥落が発生し、鉄筋腐食が進行する可能性がある。」と書いています。文章としては自然です。

しかし、「なぜ今後も進行するのか?」が抜けています。

例えば、

今後も凍結防止剤を含む水分の供給が継続するため、塩化物イオンの侵入および鉄筋腐食が進行し、腐食生成物の膨張によってひび割れや剥離・剥落が拡大する可能性がある。

こうすると、現在 → 劣化要因の継続 → 劣化機構 → 将来の変状 がつながります。

 

⑤ 対策が原因に対応しているか 判定:○~△

AI答案の、劣化部をはつり取る・鉄筋を防錆処理する・断面修復する・表面被覆するという内容自体は、対策として考えられます。

ただし、ここでも一歩踏み込みます。もし「水や凍結防止剤を含む水が入ってくること」が劣化を継続させているのであれば、「そもそも、なぜ水が入ってくるのか?」を考えなければなりません。

排水施設・伸縮装置・漏水・水掛かりなどの状況を確認し、必要に応じて改善する。こうすることで、原因への対策と劣化した部分への対策を分けて考えることができます。

 

⑥ 再劣化・維持管理まで考えているか 判定:○

ここはAI答案にも書かれています。「補修後は定期的な点検を実施し、劣化状況を確認する。」これは良いところです。

ただし、さらに具体化するなら、

補修後も定期点検によりひび割れ、剥離・剥落、水の浸入状況等を確認し、再劣化の兆候が認められた場合には早期に対応する。

というように、「何を見るのか」まで書くと、より実務的になります。

 

では、Pockyならどう考えるのか

ここで大切なのは、いきなり答案を書かないことです。私はまず、頭の中で次のように整理します。

STEP① 問題文から情報を拾う 寒冷地/凍結防止剤/日射/水分/スケーリング/ひび割れ/剥離/塩化物イオン/長期間供用

STEP② 劣化要因を考える 凍結・融解、水分、凍結防止剤、塩化物イオン

STEP③ 劣化機構を考える 「凍害と塩害が別々にある」と考えるだけでなく、複数の劣化要因が同じ構造物で作用していると考えます。

STEP④ 現在の状態 スケーリング → ひび割れ・剥離 → 塩化物イオン侵入 → 鉄筋腐食の可能性

STEP⑤ 将来予測 「この環境が今後も続いたら?」と考えます。 水分供給継続 → 凍結融解継続 → 塩化物イオン侵入継続 → 鉄筋腐食進行 → ひび割れ・剥離・剥落拡大

STEP⑥ 対策 ここで初めて対策を考えます。 ①劣化因子を入れない(排水・伸縮装置等の改善)→ ②劣化した部分を除去(はつり)→ ③鉄筋を処理(防錆処理)→ ④断面を復旧(断面修復)→ ⑤水分・塩化物イオンの侵入を抑制(表面保護等)→ ⑥その後の維持管理(定期点検)

 

これを文章にするとどうなるか

A部では、寒冷地に位置し、冬期に凍結防止剤が散布されることに加え、日射による融解と再凍結が生じる環境であることから、凍結融解作用によるスケーリングが進行したと考える。また、凍結防止剤を含む水分がコンクリート内部へ侵入することで、塩化物イオンが鉄筋位置まで浸入し、鉄筋腐食を促進している可能性がある。

今後もこの環境が継続すれば、凍結融解作用による表層劣化が進行するとともに、塩化物イオンの侵入による鉄筋腐食も進行し、ひび割れ、剥離・剥落等が拡大する可能性がある。

対策として、まず伸縮装置や排水施設等を改善し、凍結防止剤を含む水分の供給を抑制する。そのうえで、劣化部をはつり取り、鉄筋の防錆処理を行った後に断面修復を行う。また、表面保護等により水分や塩化物イオンの侵入を抑制する。補修後も定期点検を行い、再劣化の兆候を早期に把握する。

 

最初のAI答案と比べてみてください

AI答案とPocky式答案。使っている専門用語は、それほど大きく変わりません。むしろ、AIの方が文章はきれいかもしれません。

では、何が違うのでしょうか。私は、「言葉」ではなく「つながり」だと思っています。

AI答案 凍害+塩害+鉄筋腐食+断面修復

Pocky式 寒冷環境 → 凍結・融解 → 表層劣化 → 水分・凍結防止剤の侵入 → 塩化物イオン侵入 → 鉄筋腐食 → ひび割れ・剥離・剥落 → 原因への対策+補修+維持管理

この違いです。

 

これが「Pocky式・劣化推理」です

私は、コンクリート診断士の記述式で、「劣化現象を知っていること」だけではなく、「その劣化がなぜ起こったのかを推理すること」が重要だと考えています。

そして、「その状態が今後どう変化するのか」を考え、最後に「では、どう対応するのか」につなげる。

これが、情報 → 原因 → 機構 → 現状 → 将来 → 対策 というPocky式の基本パターンです。

 

あなたも自分の答案を診断してみてください

次に自分が記述式の答案を書いたときは、ぜひ次の6項目をチェックしてください。

□ ① 問題文の情報を使っているか □ ② 診断の根拠があるか □ ③ 劣化機構がつながっているか □ ④ 将来予測に根拠があるか □ ⑤ 対策が原因に対応しているか □ ⑥ 再劣化・維持管理まで考えているか

一つでも「うーん……」と思ったところがあれば、そこが答案を改善するポイントです。

 

まとめ

今回、AI答案を見てもらいました。おそらく、「間違ってはいない」と思った方が多かったのではないでしょうか。それでいいんです。

今回の目的は、AI答案を否定することではありません。むしろ、「一見正しそうな答案の、どこを確認すればいいのか?」を知ってもらうことです。

AIは、これからますます進化します。だから私は、AIと文章作成能力で勝負する必要はないと思っています。

それよりも、「その答案が本当に問題に答えているのかを判断できる人になる」こと。これが、これからのコンクリート診断士の記述式対策では重要になると考えています。

 

次回は、さらに難しくします

次回は、「この答案、実はかなり危ないです」という問題を出します。今回よりも、「一見すると正解に見えるけど、よく読むと論理がおかしい」という答案です。

例えば、「中性化が進んでいるから鉄筋腐食が進行する」と書いてあったら、本当にそれだけでいいでしょうか。また、「ASRが確認されたから、今後もASRが進行する」という判断は、本当に正しいでしょうか。

診断士なら、ここをどう判断するのか。次回は、ここをPocky式で徹底的に掘り下げます。

 

Pocky式・答案診断の基本

正解を覚えるのではなく、問題文から正解を組み立てる。

これが、私が考えるコンクリート診断士記述式の勉強法です。

 

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Pockyの一言

AIに「答え」を作ってもらうのは簡単です。でも、「その答え、本当に問題文から導き出しましたか?」と自分に問いかけてみてください。

そこからが、コンクリート診断士の勉強です。

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