【混和材料とは】コンクリート性能を左右する“第4の要素”を徹底解説

混和材・剤 コンクリート関連

こんにちは。ポッキーです。

ポッキー
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今回は、コンクリートの性能を根本から変える「混和材料」について、技術者の視点から解説します。

コンクリートと聞くと、「セメント・水・骨材」の三要素で構成されると思われがちですが、実際の現場では**混和材料(こんわざいりょう)**が重要な役割を果たしています。
この材料を正しく理解し使いこなすことは、耐久性の高い構造物を実現する上で、主任技士としての大切な責務です。

1.混和材料とは

混和材料とは、水・セメント・骨材以外で、コンクリートやモルタル、セメントペーストに性能を付与するために添加される材料の総称です。

大きく分けて次の2種類があります。

  • 混和剤(Chemical Admixture)
     使用量はセメント質量の1%以下。化学作用を利用し、フレッシュ性状や硬化性能を調整する薬品類。例:AE剤、減水剤など。

  • 混和材(Mineral Admixture)
     使用量はセメント質量の5%以上。セメントの一部を置換して使用する粉体材料。例:フライアッシュ、高炉スラグ微粉末など。

混和材は、近年では**環境負荷低減(カーボンニュートラル)**の観点からも注目されています。産業副産物を再利用することで、セメント製造時のCO₂排出を抑制できるためです。

2.混和剤:コンクリートの作業性と品質を支える化学の力

(1) AE剤:作業性と耐凍害性の向上

AE剤(Air Entraining Agent)は、コンクリート中に微細な空気泡を均一に連行させる界面活性剤の一種です。
この空気泡は“ボールベアリング効果”を生み、ワーカビリティーを向上させます。

さらに、空気泡が凍結時の膨張圧を吸収することで、**凍結融解作用に対する抵抗性(耐凍害性)**を大きく改善します。寒冷地の構造物では欠かせません。

注意点:

  • 添加量が多すぎると強度低下や硬化不良を招く。

  • フライアッシュ中の未燃カーボンがAE剤を吸着し、空気量が安定しない場合がある。

(2) 高性能AE減水剤:高品質コンクリートの鍵

ポリカルボン酸系を主成分とする高性能AE減水剤は、高い減水性能優れたスランプ保持性能を持ちます。

  • 単位水量を減らし、耐久性を確保できる。

  • 高流動・高強度コンクリートの製造に不可欠。

  • 水和熱を抑制し、温度ひび割れ対策にも効果的。

注意点:

  • 粘性が増すため、ポンプ圧送時の負荷や経時変化を確認する必要がある。

  • スラッジ水の混入は減水効果を不安定にする。

(3) 超遅延剤:戻りコンクリートの再利用と打継ぎ対策

超遅延剤は、セメントの水和反応を長時間抑制する混和剤で、戻りコンクリートの再利用や、暑中時の打設間隔対策に使用されます。

  • グルコン酸塩系のものは強度や耐久性への影響が少ない。

  • 環境面では、廃棄コンクリート削減に大きく貢献する。

注意点:

  • 添加量が多いとブリージング量が増加し、打継ぎ部での付着力低下を招く。

  • 打継ぎ時はブリージング水の除去を徹底する。

(4) 水中不分離性混和剤:特殊条件下での品質確保

水中コンクリートの打設時、分離や洗い出しを防止するために粘性を付与する混和剤です。
この使用により、水中でも均一な品質を保つことが可能です。

注意点:

  • 粘性が高くなり過ぎると施工性が低下。

  • 凝結遅延により型枠への側圧が増加するため、脱型時期の管理が必要。

3.混和材:耐久性と環境性能を両立する粉体材料

(1) フライアッシュ(FA)

火力発電所で発生する微細な球状粉体で、セメント中の水酸化カルシウムと反応するポゾラン反応により長期強度を高めます。

特徴:

  • 水和熱を低減し、温度ひび割れを抑制。

  • 水密性が高く、塩化物や硫酸塩の浸透を防ぐ。

  • アルカリ骨材反応を抑制。

注意点:

  • 未燃カーボン量によりAE剤との相性が変わるため、空気量管理が重要。

(2) 高炉スラグ微粉末(BFS)

製鉄所の副産物である溶融スラグを急冷・粉砕したもの。潜在水硬性を有し、湿潤養生を行うことで高い性能を発揮します。

特徴:

  • 水和熱低減、長期強度増進、水密性向上。

  • 塩害・ASRの抑制にも有効。

注意点:

  • 養生温度が高すぎると活性化しすぎて水和熱が増すことがある。

  • 一般的に中性化速度がやや大きい傾向があるため、かぶり厚の確保が重要。

(3) シリカヒューム(SF)

金属シリコン製造時の副産物で、粒径0.1μm以下の超微粒子。ポゾラン反応とフィラー効果により、極めて緻密な組織を形成します。

特徴:

  • 高強度・高耐久コンクリートの実現。

  • 微細空隙を埋めることで透水性を大幅に低下。

注意点:

  • 分散が不十分だと品質にムラが生じる。

  • AE剤を吸着しやすく、耐凍害性が低下する場合があるため、空気量調整が必須。

4.混和材料の選定における技術者の責務

混和材料の選定は、単に「性能を良くするため」ではなく、構造物の要求性能と施工条件に最も適した組み合わせを選ぶことが目的です。

  • 材料間の相互作用(吸着・遅延・粘性)を把握する。

  • 配合試験で性能を確認する。

  • 現場での温度、輸送距離、圧送条件を踏まえた運用を行う。

また、近年では環境負荷低減の観点から、混和材の積極的な利用が推奨されています。
セメントの代替としてフライアッシュやスラグを活用することは、CO₂排出削減に直結します。

ただし、これらを大量に使用する場合は、品質のばらつきや中性化進行への対策を講じることが必須です。

5.まとめ:混和材料の理解が主任技士の力量を決める

コンクリートの性能は、配合と材料の選択で大きく変わります。
混和材料を正しく理解し、目的に応じて適切に使用できるかどうかが、技術者としての実力を左右します。

これからの時代、性能規定型の設計・施工が主流となり、技術者自身の判断力が品質を決定します。
混和材料の知識を体系的に整理し、常に最新の動向を把握することが、主任技士・診断士としての責務です。

コンクリートは生きています。
材料の一つひとつを理解し、適切に管理することで、私たちは“長く持つ構造物”を後世に残すことができるのです。

最後までお読みいただきありがとうございました。

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