コンクリート診断士は、合格率が15%程度の難易度が高い民間資格です。
この記事では、独学で勉強できるように【火害】についてまとめています。
私は、コンクリート診断士、コンクリート主任技士を取得しています。
特に、コンクリート診断士の取得を目指している方に有益な情報を発信すること目指しています。
そして最後には、記述式問題の模範解答を記載していますので最後までご覧ください。また、私が使った参考書も紹介しています。
火害は、過去問をみても必ず出題される問題です。特徴を理解すると難しいものではありません。
頑張ってください。
火 害
火害は、火の温度により構造物が脆くなる劣化現象です。
今までの劣化とは異なり、とても分かりやすいのではないかと思います。
それは、コンクリートが受けた温度で劣化過程が判断できるからです。
コンクリートは1200℃以上になると融解します。
300℃未満では殆ど構造物に対して影響がありません。
なので、300~1200℃間の劣化現状を把握することでどれくらいコンクリート等が損傷を受けているのかが判ります。
例えば受熱温度が500℃だとします。
でもコンクリート内部は500℃にはなりません。当然のことです。かぶりが存在するからです。そのため、鉄筋配置位置では300℃程度である可能性があります。
なので、表面温度も大事ですが、構造上問題ないかどうかは鉄筋位置での受熱温度も重要になります。
総合的な判定が必要です。
メカニズム
それによりコンクリートとしての結合力が弱まるというものです。
具体的にいうと、モルタルは収縮し、一方骨材は膨張するとしたらコンクリートの結合力は弱くなると思います。この様はイメージです。
受熱温度によるコンクリートの色
受熱温度によってコンクリートの色が変化します。
これについて説明します。
① 300℃未満 すすが付着している。
この状態は、構造物としては健全です。ただ、見た目が悪いということになります。
② 300℃~600℃ ピンク色
この状態では、いろいろ重要なことが起こります。基準は500℃です。
圧縮強度は半分になりますが、時間の経過とともに90%程度は復活します。ただし、弾性係数に至っては20%程度まで低下し、復活しても50%程度です。そのため、コンクリートとしての健全性の基準は、300℃程度と考えてもいいのではないかと思います。
構造物はコンクリートだけではなく鉄筋もあります。では、鉄筋はというと500℃以下であれば大丈夫です。
では、PC 鋼材であればどうでしょうか?
それは、300℃以下なら大丈夫です。また、受熱したコンクリートは中性化します。
中性化は500℃~580℃と言われています。なので、中性化を調査する方法でも受熱温度を把握することができます。
③ 600℃~950℃ 灰白色
この状態は、500℃を超えているので、補強が必要になる場合があります。
④ 950℃~1200℃ 淡黄色
この状態は、かなりの補強が必要になります。
⑤ 1200℃以上 融解
コンクリートが融解します。
ちょっとしたまとめ
コンクリートは300℃以下であれば健全です。
鉄筋もPC 鋼材もコンクリート内部に配置されているものなので構造物として問題ありません。
ただし、弾性係数には注意が必要です。ほとんど時間が経過しても回復が見込めないからです。
劣化過程
火害の場合は、Ⅰ~Ⅴ級で分けられます。潜伏期~劣化期ではありません。
① Ⅰ級 無被害多少受熱したくらいの。(補修なし)
② Ⅱ級 すす(補修なし。でも外観は悪い)
③ Ⅲ級 ピンク色(補修必要。断面修復、ひび割れ注入など現状回復)
④ Ⅳ級 灰白色(補修必要。場合によっては補強必要)
⑤ Ⅴ級 淡黄色(補強必要。)
※これはあくまでもコンクリート表面の判定になります。
調査方法
調査方法は、外観調査、具体的に受熱温度を確認する方法、コンクリートの成分が変化するので成分検査などが必要になります。
① UV スペクトル法
コンクリートに使用されている混和剤に着目し受熱温度を把握する方法です。
② 示差熱重量分析
※中性化でも出てきましたので詳細は中性化で確認して下さい。
③ X 線回折
※これも中性化で出てきました。
※中性化を調査する方法は全て使用できます。
※調査方法は正直他にもあると思います。
コンクリート診断士の合格に必須 コンクリートの劣化原因である中性化を解説
コンクリート成分が判ればいいので、EPMA や原子吸光度法、ICP など調査方法があると思います。火害の特徴が理解できていればどういった調査方法なのかが判断できると思います。
ただし、論文では、火害かどうかの調査方法が重要ではなく、どれくらい構造物が損傷しているかを調査する方が重要になります。
そのため、①コンクリートの圧縮強度、②コンクリートの弾性係数(これらはコア採取する)、③鉄筋の許容引張応力度(鉄筋の採取が必要)、④500~580℃受熱したかどうかを把握する必要があります。(フェノールフタレイン溶液でも可)この温度になると中性化しますので、鉄筋が腐食してしまいます。
なので、仮に圧縮強度が半分になっていれば、補強もしくは建て替えが必要になりますし、鉄筋の引張強度が低下していれば、鉄筋を追加する必要があります。
また、弾性係数が低下していれば、剛性を高める方法(鋼板接着や巻き立て)が必要になります。
そして、中性化していれば、断面修復や再アルカリ化などの鉄筋を防錆する処置が必要になります。
論文
論文を説明します。
想定としては、橋脚が火害の影響を受けました。状況としては、柱の角で剥落が生じています。また、コンクリート表面の色はピンクです。
この状況でわからないことは、コンクリート内部の温度です。この辺りをどう表現するかだと思います。橋脚のかぶりは上部工と違って大きいことも想像できます。そう考えた場合、鉄筋への影響は少ないのではと推察できると思います。
柱の角の剥落原因も気になります。通常剥落する場合は、高強度コンクリートなどで起こります。爆裂です。
でも、橋脚のコンクリート強度は24N/mm2 程度です。では、なぜ剥落したのでしょうか?この辺りは、想像でいいと思います。
私なら、角なので温度が上昇し易い箇所となることを考えます。2方向から受熱するからです。
また、かぶりも少なくなっていた可能性があります。参考書にも記載がありましたが、高強度コンクリートを使用していないので、施工不良や受熱しやすい部位である可能性が高いと判断してもいいのではないかと思います。
これ以外には逆に見当たらないと思います。これを踏まえてここでは火害とわかっているので調査方法と対策を論じてみます。
ここからの記事は、下の記事からご覧ください。
【模範解答】記述式のテンプレートをコンクリート診断士が紹介!
補足説明
論文を記載しての補足説明
この様な感じだと思います。
これは私の想定で、しかも自由に記載しています。問題文であれば、具体的に記述内容を指定してくると思います。ですが、論文の流れはかわりません。
化学的侵食についても解説しています。ぜひご覧ください。
【コンクリート診断士合格に必須】コンクリートの劣化原因である化学的侵食を解説
記述式を苦手としている方はぜひご覧ください。
【模範解答】記述式のテンプレートをコンクリート診断士が紹介!
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