コンクリート診断士の試験は毎年難しくなっていると感じます。
それは、物を作る時代から維持管理に方向がシフトしており、より社会的に重要さが求めれれるよ
になっているからだと思っています。
なので、皆さん、コンクリート診断士の資格を取りましょう。
こんな思いでこれから、皆さんが合格するために説明していこうと思っています。
私は、コンクリート診断士、コンクリート主任技士を取得しています。
特に、コンクリート診断士の取得を目指している方に有益な情報を発信すること目指しています。
この資格合格のためには劣化原因のメカニズムを知る必要があります。この辺りの基礎が理解でき
ていれば応用問題も対応できると思っています。
中性化とは
中性化とは、簡単に言うと「コンクリートが中性になる」ことです。中性とはPHが11以下になることを意味します。(通常のコンクリートのPHは12以上です)
下の写真は、無色の部分が中性化している範囲となります。
コンクリートが中性化になったらどうして問題になるの??
では、簡単に説明しますね。コンクリートが中性化になるとどうして問題になるか?それは、コンクリートには鉄筋が入っています。それが、中性化になると鉄筋が錆びてしまいます。鉄筋が錆びると構造物の耐力が落ちてしまうんだ。
なるほど!建物などが地震などの衝撃に弱くなるってことね。
通常のコンクリートはアルカリ性です。コンクリート中がアルカリ性で保たれることで、鉄筋は、錆びることなく安定していることができます。つまり、鉄筋の周りには不働態皮膜という鎧が装備されている状態ということです。なので、コンクリートがアルカリ性から中性になると言うことは、何かの変状が起きているということになります。この状態が続くと、人間で例えると病気になっているということになります。
空気中の二酸化炭素が原因なのね
でも、どうして鉄筋がさびてしまうの?
中性化すると鉄筋の回りにある不動態被膜が破壊され、鉄筋が腐食しコンクリート表面にひび割れが発生します。中性化は鉄筋が錆びてしまうため問題になります。
これからよく劣化現象を説明する上で水酸化カルシウムが出てきます。つまり、水酸化カルシウムは、コンクリート診断士を勉強していく上での胆(きも)となります。
水酸化カルシウムが胆!!よく頭に入れておきます。
メカニズム
中性化のまとめとして1~5を覚えておきましょう!すごく大切なことです。
1.空気中の二酸化炭素とコンクリート内で炭酸イオンになる。
2.炭酸イオンが水酸化カルシウムが反応する。
3.それにより炭酸カルシウムとなる。よって、中性化する。
4.中性化すると不動態被膜が破壊される。
5.鉄筋が腐食する。(腐食するとその体積膨張により、ひび割れ、剥離、剥落の原因)
メカニズムを理解したところで、中性化の特徴を深掘りしていきます。
二酸化炭素がたくさんコンクリートに侵入すると中性化しやすくなります。次に二酸化炭素が侵入しやすい条件についてですが、それは乾燥している時です。なので、湿っている条件よりも乾燥している条件の方が侵入しやすくなります。それでは、乾燥状態が一番中性化する条件なのかというと、そうとは限りません。それは、水分が必要だからです。メカニズムの説明の中に「溶液内で炭酸イオンになる」と記載していますが、溶液というのが水分です。いくら二酸化炭素が侵入してきても適度な水分がなければ炭酸イオンになれず中性化しにくくなります。
中性化し易い条件は、湿度50%程度、屋内です。フライアッシュや高炉セメントは、普通セメントと比べすると中性化しやすいのは水酸化カルシウム量が少ないためです。
Ca(OH)2 + CO2 → CaCO3 + H2O(中性化の化学式)
中性化の特徴(まとめ)
-
外よりも室内の方が中性化しやすい。
-
湿度が50~60%時に中性化しやすい。
-
空隙が多いコンクリートは中性化しやすい。
-
緻密なコンクリートは中性化しにくい。(混合セメントも含む)
-
水酸化カルシウムが多いと中性化しにくい。
-
高アルカリ下では中性化し易い。
空隙のあるコンクリートとは、一般的に水セメント比が多いものです。それと、既設構造物などは雨などに打たれ表面の成分が溶出しています。これも空隙が多いものになります。
水酸化カルシウムが多いものは、普通セメントなどがそうです。混合セメントは少なくなります。その理由は、高炉スラグ等は、硬化する際、水酸化カルシウムと反応しコンクリートが緻密化します。そのため、水酸化カルシウムが少なくなるのです。しかし、コンクリートは緻密なため、中性化しにくいとも言えます。しかし、総合的に考えれば、普通セメントの方が混合セメントよりも中性化しにくいということになります。
中性化速度は、早強<普通<混合 の順である。
次に高アルカリ下では中性化し易いことを簡単に解説します。
調査方法について
メカニズムを把握すれば調査の仕方がなんとなく理解できます。
コンクリートが中性になっているかどうかをどうやって調べればよいのかとか。
構造物がさらされている環境条件で、なんとなく中性化しているのではないかとか。
剥離や剥落が発生していればなんとなく中性化しているかもしれない。
なんとなく、頭に浮かんでくると思います。後は、調査方法の種類を覚えていれば選択できると思います。ただ調査方法にはいろいろなものがあって、試験問題には何?みたいなものも出てきます。でもその辺りは消去法で対応できると思います。
調査方法は暗記です。主に5種類あります。とりあえず簡潔に述べます。
はつり
・コンクリート表面をはつりとりフェノールフタレイン溶液を噴霧し調査する方法
ドリル法
・コンクリートにドリルで孔を開け、その粉末をろ紙で受取り調査する方法
※ろ紙で粉末を受け取る前には、既にフェノールフタレイン溶液が噴霧されている。
写真:株式会社 MIカンパニー HPより引用
コア
・構造物からコアを採取し、フェノールフタレイン溶液を噴霧し5か所を測定して中性化深さを把握する方法
示差熱重量分析
・コンクリート(試料)を1000℃まで加熱し水酸化カルシウムと炭酸カルシウム量を把握(定量)する方法
※水酸化カルシウムは500度くらいで分解されます。なので、火害による受熱温度が500~580度になると中性化します。
写真:株式会社太平洋コンサルタント > 機器を用いた分析 > 示差熱天秤分析 (TG-DTA)引用
粉末X線解析
・コンクリート試料にX線を照射することで成分が調査できる方法(装置が高価)
写真:株式会社太平洋コンサルタント > 機器を用いた分析 > 粉末X線回折(XRD)引用
これらの方法の詳細は、参考書等で確認してください。(たとえば、ドリル法:Φ10㎜のドリル径で削孔数3孔値の平均値で中性化深さを測定する。偏差は±30%とする。それを超えれば新たに1孔開けるなどする。(このあたりは、工夫して覚えてください。例えば、近くの橋の下で診断してみるとかして、実物を見て診断してみるのもいいと思います。(;^ω^))
※中性化の予測式(C=A√t)も覚えましょう。ほぼ100%の確率で試験問題に出題されます。過去問のいろんなパターンを練習しておくと確実に正解できます。
劣化過程
補修方法を決定するために必要な事項です。どの劣化過程にあるかで補修方法が変わってきます。劣化過程は簡単です。4種類しかありません。それは、潜伏期、進展期、加速期(前期・後期)、劣化期です。でも全ての特徴を覚える必要はありません。重要なところは、進展期と加速期を把握することです。
劣化過程は4つ。でも重要なのは、進展期と加速期なのね。
引用:中性化 コンクリート工学研究室 岩城一郎
進展期の特徴です
加速期の特徴です。
補修補強方法については、別で説明しようと思います。
理由は、劣化機構の違いで補修方法が全て決まるのではなく、損傷状態や供用年数なども考慮して選定されます。例えば、中性化で鉄筋が腐食しようが、塩害で鉄筋が腐食しようが、補修方法は大きくは変わりません。変わるとしたら、断面修復を行った後の表面含侵工法なのか表面被覆工法なのかどうかくらいです。
補強が必要ならば、現状を補修した後、連続炭素繊維シートを行う。などになります。分かりやすく言うと、転んで足を怪我して絆創膏を貼るのと、サッカーをしていてスパイクが足に当たって怪我して絆創膏を貼ることは、怪我した過程は異なるが、対処の仕方は同じです。
怪我の程度で絆創膏なのかシップなのか、骨が折れていればギブスになると思います。そのため、劣化現象を理解した後まとめて覚える方がいいと思いました。
なるほど。おおむね、補修方法は、劣化機構ごとではなく、損傷の程度で決定するのですね。
【コンクリート診断士合格に必須】 補修・補強工法をわかりやすく解説
中性化の要点
これまで中性化のメカニズムから特徴まで説明してきましたが、理解はできましたか?それでは、これから中性化に関する問い20題を出題します。活用方法としては、通勤時の移動時間や隙間時間などにスマホ等で確認できるものになっています。ぜひ、活用してみて下さい。
よし。頑張ってみるか~!
論文を書くポイント
どうでしたか。上の20問は。どれも確実に暗記しておきたいものばかりです。
最後に中性化において論文を記載するときのアドバイスをしておきます。
中性化によるひび割れの形状を理解しておくことが大切です。ひび割れのパターンは、鉄筋に沿ったひび割れしかありません。なぜなら鉄筋が腐食することでひび割れが生じるからです。また、構造物が完成して直ぐに発生するものではありません。その理由は、二酸化炭素が侵入して鉄筋が錆びるには、10年単位で時間がかかるからです。例えば鉄筋に沿ったひび割れであっても、ひび割れ発生時期が早期であれば、温度ひび割れや、乾燥収縮ひび割れの可能性が高くなります。
論文って難しいですよね~。私でも時間を掛けずに勉強できるものないかしら。
わかりました。論文を分かりやすくテンプレートにしたものがあります。もちろん、中性化の論文も書いています。
記述式を苦手と思っている方に必見な記事です。ぜひご覧ください。
【模範解答】記述式のテンプレートをコンクリート診断士が紹介!
塩害についても解説しています。この記事にも塩害についての具体的に記載していますので、ぜひご覧ください。
コンクリート診断士の合格に必須 コンクリートの劣化原因である塩害を解説
これは、私が勉強した時に活用したテキストです。ことらもぜび参考してみて下さい。
コメント